マリッジリング

1か月ぶりにA子に会った日、内から湧水のように湧き出る自信を

味方につけた俺はこれまでと違った。

 

今まで聞けずにいたA子の現状という聖域に踏み込んだのである。

あれだけ躊躇してたのがウソみたいに。

 

実は、以前からA子がこの話題を避けていることは知っていた。

でも、今日の俺ならどんな答えであろうと受け入れられる

そんな気がしていた。

 

最初、A子ははぐらかしていたが、俺が本気だと気付いたらしい。

悲しげな顔を見せながら、少し微笑んだような表情で話してくれた。

 

20年前に結婚したこと、子供はいなかったが犬を

我が子のようにかわいがっていたこと

旦那が浮気を繰り返していたこと

2年前に離婚したこと・・・。

それ以後、男性不振になっていること。

 

俺と会ったのは、男性不振を克服したいという思いからだった。

他の知人男性では目を見て話すことすらできなかったが

俺とはなぜかうまくできたこと。

 

もう俺の心は決まっていた。

これからA子を守っていこうと心に決めたのだ。

これは俺からのA子への感謝の気持ちでもある。

 

A子にやりたいことはないのかと聞いてみた。

すると、なかなかに過激な答えが返ってきた。

 

「前の旦那からもらった結婚指輪を捨ててしまいたい。

式を挙げた沖縄で!」

 

昔から芯の強い子だとは思っていたが

なかなか過激な行動だとは・・・と思ったのは心にしまっておこう。

(書かないとは言っていない)

 

沖縄か・・・。

そういえば沖縄は新婚旅行で行ったっきりだったな。

俺も結婚指輪捨ててやろうかな。

そこで代わりの新しい指輪を渡そう。そうしよう。

 

そうと決まれば、あとは旅の手配だけだ。

歴代愛人との最初の旅は沖縄と決めている例のエロ社長に

沖縄旅行を指南してもらった。

 

おすすめの宿や観光スポット、飛行機などなど。

こんな時ほどエロ社長が心強いことはない。

このままうちとの契約も増やして欲しいものである。

 

久々に小学生の頃の遠足前夜の気持ちを抑えられずにいた。

そう、そのおかげで眠れないからとiPhoneを触るまでは。

 

明日のことをイメージしようと沖縄のことについて再度調べていると

「沖縄ではレンタカーが必須」

「車のない沖縄旅行は窮屈この上なし」

「沖縄と車は切っても切り離せない」

こんな言葉がシャワーのようにかかってくる。

 

やばい・・・レンタカーなんて手配してないぞ。

エロ社長め!自分がいつもお抱えの運転手を車ごと先に

沖縄に行かせてることを忘れてたな!こっちは一般人だぞ!

 

しかし、愛人5号と先に沖縄に行っている抜けてる

エロ野郎に文句を言っても旅行は待ってくれない。

焦る深夜2時、必死で調べて当日予約可能なレンタカー会社を発見。

 

翌朝速攻で予約を取り付け、A子と待ち合わせているいつもの駅へ。

 

間抜けなことをしても男はそんなそぶりを見せない。

そんなものである。